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田町駅が最寄りの『芝浦ゲートウェイクリニック』は、免疫力をみる血液検査、がん等の難治性の病気に対し、同種白血球輸注療法を行っているクリニックです。

カビとキノコと酵母たちと免疫

前回、カビやキノコや酵母のことを真菌類と言い、地球の物質循環にとって必要不可欠の存在であるとお話ししました。今回は、真菌類が我々人類にとっても重要な存在であるというお話しです。

 

地球はカビの惑星と言っても過言ではないという程、あらゆる所にカビは存在し、大気中1m3中に1000個生きたカビの胞子が存在すると前回にもお話ししました。

まず、誕生の瞬間私たちは、母体の羊水を吐きながら狭い産道を抜け、世界に飛び出します。するとペシャンコに折り畳まれていた肺が初めて膨らみ、息を吸い込みオギャーと泣きます。その初めての呼吸において何百という大気中のカビの胞子を吸い込み、吸い込まれたカビの胞子は、鼻粘膜、気道、気管支、肺胞などの体内の組織に付着します。そこで初めて免疫のメカニズムが働き始め、免疫細胞がカビの胞子を排除します。呼吸をする度カビの胞子が入り、排除しの繰り返し繰り返しによって、基礎免疫を築いていくのです。

そして今でも呼吸によって取り込まれたカビの胞子を丹念に排除する事により、適度な免疫刺激は続いています。恒常性の維持の一環と言えるでしょう。

 

母体においては、母親の免疫に守られていた私たちに、免疫の独り立ちのスイッチを大気中のカビが入れていたのです。ちょっとビックリしませんか?そして、カビたち真菌類の胞子は、我々の髪の毛、皮膚、目の角膜、鼻粘膜、口腔内に住みつきます。私たちは、真菌たちと共に生きているのです。そして、なんと言っても真菌が一番多く住んでいるのは腸なのです。

 

腸内においての真菌 類の働きは、腸管免疫の重要な役割を担っています。

カビや酵母など真菌類の胞子の細胞壁には、βグルカンという物質が含まれています。βグルカンが腸の上皮細胞に接触すると、その刺激が腸管の免疫細胞に伝わり、敵を攻撃する指令物資サイトカインを盛んに生産し、免疫力が高まります。

 

カビの胞子が、私たちの免疫系に切っても切れない役割を担っているのと同じく、真菌類の酵母やキノコ類も食物として取り込まれると、細胞壁にあるβグルカンが同じように腸内免疫を高めます。発酵食品やキノコが免疫に良いといわれる所以です。

それにしても、ペニシリンやロックホール(青カビチーズ)など多少なりともカビの恩恵を受けていると思っていたけれど、どちらかといえば、風呂場や水回りのそこここに蔓延られると大騒ぎで、敵のように認識していた存在だったのに、まさか私達の生命活動にここまでの関わりがあるなんて。しかも免疫系にこんなにも重要な役割を果たしていたなんて!正直驚いています。

真菌たちと上手なお付き合い、して行きたいですね。

 

次回、βグルカンについてもう少し掘り下げてみようかと思います。